子どもの「キャッシュレス決済」をどう考える?

最近は様々な種類の電子マネーやポイント、支払い方法が選べる時代になりました。
現金では支払えないサービスやネット通販もあるほどです。


ちゃんと管理さえしていれば、現金で払うよりもお得だったり、サービスがあったりと現金主義の人でもスルーできないほどのメリットがあります。

今後、ますます現金よりキャッシュレスが普及してくるとなると、子どもにどう伝えようか考えていかなければなりません。

Yuri Ishiguro
Yuri Ishiguro

この記事は次のような人におすすめ!

  • 子どものキャッシュレス事情を知りたい人
  • キャッシュレス決済が子どもにとって良いのか、悪いのか気になる人
  • 子どものおこづかいをキャッシュレスにしようか考えている人

1.キャッスレス決済と種類

キャッシュレス決済とは、紙幣・硬貨といった現金を使わずに支払う決済方法です。

キャッシュレス決済は、3つの支払い方法に分けられ、またカードを使うキャッシュレス決済とスマートフォンを使うキャッシュレス決済の2つに大きく分けることができます。

3つの支払い方法

支払方法特長
前払い事前にお金をチャージして、チャージした金額内で支払いをするキャッシュレス決済の方法です。
チャージした金額内での決済となるため、使いすぎを防げるメリットの反面、
チャージした残高が少なくなるたびにチャージしなければならないデメリットがあります。

交通系・流通系電子マネー(プリペイド式)など
即時払い支払いのタイミングと同時に銀行口座から引き落としが行われる決済方法です。
前払いの方法とは異なり、事前にチャージする必要がなく、審査なしで利用することができます。
銀行口座から決済されるので、口座に残高がないと利用できません。
また、ポイント還元や特典が充実していないことがあります。

デビットカードなど
後払いクレジットカード会社などが立て替えたお金を後日支払う決済方法です。
手元に現金がなくても支払いができるメリットの反面、現金が減る感覚が薄いので
使いすぎるデメリットがあります。

クレジットカードなど
*チャージとは:ICチップが内蔵されたカードや携帯電話に専用の機会やソフトを使って入金すること
出典:キャッシュレスとは?代表的な種類とおすすめクレジットカードを紹介|三菱UFJニコス

キャッシュレス決済の種類

電子マネー

電子マネーとは、お金の価値をデータ化し、カードやスマートフォンなどにお金としての機能を持たせたものを指します。

  • 電子マネーの決済方法には、事前にお金をチャージして利用する「先払い式(プリペイド式)」
  • 登録したクレジットカードから後日引き落とされる「後払い式(ポストペイ式)」
  • 支払いと同時に銀行口座などから引き落としがされる「即時払い式(デビット式)」

の3つがあります。

電子マネーの種類は、nanacoやWAONなどの流通系、SuicaやPASMOなどの交通系、iDやQUICPayなどのクレジットカード系、paypayや楽天payなどのQRコード・バーコード決済系の4つがあります。

流通系・交通系電子マネー

プリペイドカードは電子マネーの機能を使用するための1つの手段であり、「使い切り型」と「チャージ型」の2つがあります。
「使い切り型」のプリペイドカードは、使える金額が決まっているカードを購入し使用します。
図書カードやQUOカードが代表的な例です。

「チャージ型」のプリペイドカードは、事前にお金をチャージし、その金額内で使用します。
残高が少なくなるたびにチャージすることで繰り返し使用できます。

nanacoやWAONなどの流通系、SuicaやPASMOなどの交通系、VISAやMastercardなどの国際カードブランド付があります。

クレジットカードとは異なり審査がなく、年齢制限もさほど厳しくありません。
小学生が利用できるプリペイドカードもあります。

クレジットカード系電子マネー

クレジットカードを連携させて利用する電子マネー。
この電子マネーで決済した場合、後日連携するクレジットカード会社から請求される仕組みです。

QRコード・バーコード決済系電子マネー

QRコードやバーコードを読み込むことで、紐付いている電子ウォレットがら支払われる仕組みです。
事前に電子ウォレットに入金チャージか銀行口座の連携が必要な場合が多いです。

デビットカード

デビットカードの支払いのタイミングと同時に銀行口座から引き落としがされるカードで、「J-Debit」と「国際デビット」の2つに大きく分けられます。
「J-Debit」は金融機関のキャッシュカードを支払いに利用するもので、日本国内の「J-Debit」の加盟店でのみ利用できます。

「国際デビット」はVISAなどの国際ブランドと提携しているカードで、世界中のVISA加盟店で利用できます。

海外旅行先でのお買い物では、現地通貨に換金する必要がなく、現地通貨での利用相当額が円換算され、日本の銀行口座から引き落とされます。

日本での利用率は高くありませんが、海外ではクレジットカードと同じように広く利用されています。

クレジットカード

スーパーマーケットやコンビニでの日常のお買い物からオンラインショッッピング、公共料金や税金の支払いまで、さまざまなシーンで利用できます。
利用するためには審査が必要です。

利用額に応じてポイントが貯まったり、利用店舗によっては割引サービスが受けられたり、海外旅行傷害保険などの保険が付帯しているなどさまざまなメリットがあります。

2.日本のキャッシュレスの現状

経済産業省は2025年の大阪万博までに「キャッシュレス決済比率40%」という目標を掲げています。
そもそもなぜ政府はキャッシュレス決済を推奨しているのでしょうか。

インバウンド消費の拡大

インバウンドとは外国人が日本を訪れる旅行のことを指します。
訪日客数が一番多い中国ですが、中国からの訪日観光客の約2割が日本のキャッシュレス決済の普及状況を不安視しているという結果が出ています。
インバウンド市場のさらなる拡大のため、キャッシュレス決済の普及が求められています。

人手不足・生産性向上のために

現代の日本は少子高齢化が進み、今後さらにその動きは加速すると思われます。
そのため、さまざまな場所で人手不足の問題が生じる可能性があります。
キャッシュレス決済の普及を進め、レジ現金残高の確認作業やレジでの接客時間などの現金関連業務を減らすことで、この問題に対処していく必要があります。

現金決済のインフラコストの削減

現在、日本の現金決済のインフラコストを維持するために、年間約1,6兆円超のコストがかかっていると言われます。
紙幣の印刷や輸送、ATM費用などがそれに当ります。

また、金融機関などでの現金取扱業務についても、オペレーションコストがかかっており、現金取扱自体の削減も求められています。

参考資料:キャッシュレス・ビジョン(経済産業省)

3.小学生のキャッシュレス事情

小学生のおこづかい、皆さんはどのような手段で渡していますか?現金?それともキャッシュレス?株式会社GVが運営する情報メディア「まねーぶ」が小学生の子どもをもつ保護者におこづかいのあげ方について意識調査を実施しています。

小学生の子どもにおこづかいを渡している302人の保護者への調査結果です。
おこづかいをキャッシュレスで渡す家庭は少なく、現金で渡す家庭が圧倒的です。
現金で渡す方がお金の重みがある、子どもにキャッシュレスは早すぎるといった意見が多く、キャッシュレス決済が普及しない社会情勢がこの意見に反映されています。

また、今後小学生のおこづかいにキャッシュレスを取り入れたいかの調査では、取り入れたいが28.9%、取り入れたくないが71.1%という結果になっています。

取り入れたい保護者の意見としては、今後キャッシュレス決済がさらに普及すると思うので、使い方や便利さを知ってもらうために取り入れたい。
簡単にお金が使えること、お金の重みが感じられなくなることが懸念されるが、自己管理、セキュリティ意識、お金の教養がつくなど良い面も考えて取り入れたい。

など、前向きな意見がある一方で、小学生のうちは使いすぎの心配やお金を使った実感がうすいため、まだ早い。
キャッシュレスは大人でも使いすぎてしまうのに、子どもが管理できるとは思えない。
算数の勉強にもなる。
といったキャッシュレスを取り入れたくない保護者の意見もあります。

4.中高生のキャッシュレス事情

中高生のおこづかいは現金で渡している家庭が93.3%、キャッシュレスあるいはキャッシュレスと現金を併用している家庭が5.6%と小学生と同様、現金で渡す家庭が圧倒的です。

一方で、このような結果があります。

高校生の2人に1人がキャッシュレス決済を利用したことがあると回答しており、高校生へのキャッシュレス決済の浸透が伺えます。
もらったおこづかいを自分でチャージして決済手段として利用しているのでしょう。
中高生が最もキャッシュレス決済を使う場所はコンビニエンスストアで78.4%、電子マネーでの決済方法が一番多く、2人に1人が利用している結果となっています。

5.キャッシュレス社会に対しての意見

博報堂生活総合研究所は2019年に「お金に関する生活者意識調査」を実施。
その意識調査で、キャッシュレス社会に「なった方がよい」「ならない方がよい」の質問に対して、「なった方がよい」が63,0%、「ならない方がよい」は37,0%という結果を発表しています。

2年前の2017年の調査結果では「なった方がよい」が48,6%、「ならない方がよい」が51,4%と「ならない方がよい」という意見が上回っていたのに対し、2年間でキャッシュレス決済に前向きな動きがみられました。

キャッシュレス社会に賛成の意見
  • 現金を持たなくてよいから
  • 利便性が高いから
  • ポイントが貯まるなどお得だから
  • やり取りがスムーズだから
  • 管理しやすいから
キャッシュレス社会に反対の意見
  • 浪費しそうだから
  • お金の感覚が麻痺しそうだから
  • お金のありがたみがなくなりそうだから
  • 現金は必要だから
  • 犯罪が多発しそうだから

6.キャッスレス決済のメリット・デメリット

キャッシュレス決済にはメリット・デメリットがあります。

メリット
  • 支払い手続きを簡単・迅速に行える
  • 割引やポイント等の特典が得られる
  • 現金を持ち歩く必要がなくなる
  • 現金を引き出す手間がなくなる
  • 現金に触れる必要がなく衛生的
  • 支払い履歴が分かり、お金の管理がしやすい
デメリット
  • 個人情報の流出や不正使用等の被害が発生する恐れがある
  • カード等の紛失・盗難の恐れがある
  • お金を使っている感覚が薄れ、使いすぎる恐れがある
  • 自身の購入・決済履歴等の個人情報が事業者等に取得・利用される恐れがある
  • 決済手段・サービスによって手数料や会費等がかかるものがある

このように、キャッシュレス決済は便利な反面、犯罪に利用される可能性があるなど注意すべき点があるのも事実です。
キャッシュレス決済を利用する際には、デメリットの面があることを忘れずに利用したいですね。

参考資料:キャッシュレス決済に関する意識調査結果詳細 消費者庁

7.子どもにキャッシュレスを教える

金融広報中央委員会の運営する「知るぽると」というサイトで、子どもにキャッシュレスを学ばせるまでのステップが掲載されています。

①日常生活の中で、お金のながれやお金には限りがあることを教え、その価値を認識させる。

②おこづかいやいつかいで現金を使う体験をさせて、お金の管理の必要性を付けさせる。

③おこづかいとしてキャッシュレス決済を利用する。

引用:(おこづかいのキャッシュレス化) ─ キャッシュレス時代における家庭の金銭教育|知るぽると

親の目が届く年齢のうちにキャッシュレス決済を使わせることで、正しい知識と使い方を身に付けることができるという考え方もあります。
その際にはセキュリティ対策を行い、リスクを理解させることが大切です。

8.子どものキャッシュレス決済で大切なこと

現金であれ、キャッシュレスであれ、子どもに渡すおこづかいはお父さんやお母さんが働いて得たお金であることを伝えることは大切なことです。
そして、失敗を恐れずにお金の経験をたくさんさせること。
子どもの時にお金の失敗で痛みを感じることは、将来のための投資になります。

子どもと一緒にチャージする

チャージするお金がどういう流れで自分の手元にあるのかを知ることは大切なこと。
そしてそのお金を自らチャージすることで、カードであれ、スマートフォンであれ、それは硬貨や紙幣の形をしていないお金であるということを理解させましょう。

キャッシュレス決済の仕方を教える

実際、どのように使うかが分からなければ始まりません。
お買い物をするときの使い方や、電車に乗る時の使い方など、使う場面や使い方を教えます。

お小遣い帳をつけ、お金の流れを見える化する

大人でさえ、キャッシュレス決済をしていると何にいくら使ったか分からなくなったり使いすぎたりしてしまうもの。
キャッシュレス決済をする度に、おこづかい帳にいつ何にいくら使ったのかや残高を書き、一か月ごとに親子でお金のことを話せると良いですね。
またレシートを貰うことも大切なことです。
ある調査ではレシートをもらう人ともらわない人では、もらう人の方が浪費癖がないという調査結果もあります。

リスクを教える

キャッシュレス決済は便利な反面、リスクがあることも忘れてはいけません。
安全に使うにはどうしたら良いのかを子どもをしっかりと話すことが大切ではないでしょうか。

お父さんやお母さんが働いて得たお金をチャージして、そのお金を使うことでお金は減っていくという流れを子どもが理解することが大切ですね。

9.まとめ

  • キャッシュレス決済にはさまざまな種類がある。
  • 小学生のキャッシュレス率は6%、中高生の2人に1人はキャッシュレス決済利用者。
  • キャッシュレス決済にはメリット・デメリットがある。
  • 子どもにキャッシュレスを教えるときは、大切なことも教えよう。

Text:Yuri Ishiguro
Director:Hirotaka Dezawa