子どもが中学生になり、今後の子どもの進学にかかる資金について考え始めたはいいけれど・・・教育資金の準備が十分でないためどうすれば良いか悩んでいる。
奨学金や教育ローンを利用しようか検討している。
などという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、奨学金という言葉は聞いたことがあるけれど、詳しいことは分からない。
教育ローンとはどういうもの?奨学金と教育ローンとは何が違うの?などなど分からないことがたくさんあると思います。
資金の問題で子どもの希望する進学先を諦めさせたくないと思うのは、親なら当たり前のことですよね。
この記事では一つの選択肢として考えられる奨学金に焦点をあてて考えていきたいと思います。
そして、奨学金制度の内容、メリット・デメリットを十分把握したうえで検討して欲しいと思います。
この記事は次のような人におすすめ!
- 奨学金の制度と種類が知りたい人
- 地方自治体や民間企業の奨学金が知りたい人
- 奨学金のメリット・デメリットが知りたい人
1.奨学金とは?
奨学金とは、独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)ではこのように定義されています。
経済的理由で修学が困難な優れた学生に学資の貸与を行い、また、経済・社会情勢等を踏まえ、学生等が安心して学べるよう、「貸与」または「給付」する制度です。
国や自治体、大学、企業などの民間団体が独自の制度を設け、学生を支援します。
独立行政法人 日本学生支援機構の平成30年度の調査では、高等専門学校の学生の約17%、大学(昼間部)の学生の約47%、短期大学(昼間部)の学生の約55%、、大学院修士課程の学生の約48%、博士課程の学生の約53%が何らかの奨学金制度を利用している結果となっています。
2.奨学金の種類
独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金
日本学生支援機構の奨学金貸与事業は、教育の機会均等の理念のもと、意欲と能力のある学生等が、自らの意思と責任において大学等で学ぶことができるよう、国の重要な教育事業として実施されています。
- 対象:国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)に在学する学生・生徒
- 貸与額:
学校種別(大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程))
設置者(国立・公立・私立)
入学年度、通学形態(自宅通学・自宅外通学)
によって定められた貸与月額のいずれかを選択。 - 返還方式:
- 定額返還方式ー貸与総額に応じて月々の返還額が算出され、返還完了まで定額で返還する制度。
- 所得連動返還方式ー前年の所得に応じてその年の毎月の返還額が決まります。
毎年の所得に応じて返還月額が変わるため、返還期間(回数)は定まりません。
- 対象:国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校(4,5年生)・専修学校(専門課程)に在籍する額生・生徒。
- 利子:年(365日あたり)3%を上限とする利子付き。
なお在学中は無利子。 - 貸与額:大学院においては5種類の貸与月額から、大学・短期大学・高等専門学校(4,5年生)・専修学校(専門課程)においては11種類の貸与月額から、それぞれ自由に選択可能。
第一種奨学金(無利子)または第二種奨学金(利子付)に加えて、入学した月の分の奨学金の月額に一時金として増額して貸与する利子付きの奨学金で、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」に申し込んだけれども利用できなかった世帯の学生・生徒を対象とする制度。
- 対象額:5種類の貸与額から自由に選択可能
- 注意点:入学時特別増額だけの貸与は不可。
また、入学前の貸与ではない。
世帯収入の基準を満たしていれば、成績だけで判断せず、しっかりとした「学ぶ意欲」があれば支援を受けることができます。
- 対象:世帯収入や資産の要件を満たし、かつ、進学先で学ぶ意欲がある学生であること。
この他にも要件あり。 - 支給額:給付奨学生として採用されて卒業する(修業年限の終期)まで、世帯の所得金額に基づく区分に応じて、学校の設置者(国公立・私立)及び通学形態(自宅通学・自宅外通学)により定まる金額(月額)が、原則毎月振り込まれます。
地方自治体の奨学金
一部の都道府県・市区町村などの地方自治体が実施する奨学金制度。
多くの地方自治体は貸与型の奨学金制度を設けていますが、給付型の奨学金制度を設けている地方自治体もあります。
各都道府県・各地方自治体により応募資格、貸与金額・給付金額等が決められていますので、気になる地方自治体HPを確認してみてください。
大学の奨学金
多くの大学が独自の奨学金制度を設けています。貸与型の奨学金制度のほか、給付型の奨学金制度が多くあるのが大学独自の奨学金制度の特徴です。
奨学金が給付される給付型奨学金制度とは異なり、学費や入学金などから全額または一部の金額が差し引かれる減免制度を設けている大学も多くあります。
またすべての国公立大学では経済的に修学困難な学生に学費の全額または半額を免除する制度が設けられています。
大学独自の奨学金制度を考えている方は進学先の学校のHPを確認してください。
民間団体の奨学金
企業や個人などが設けている奨学金制度です。
多くの場合が進学先の学校を通じて申し込むことになります。
実施団体により応募基準や給付額は異なります。
下記から民間団体の奨学金制度も検索できます。
新聞奨学生制度
新聞奨学生制度とは、新聞販売店に住み込みで働くことで給与が支給され、学費の一部もしくは全額を新聞社が肩代わりする制度です。
家賃や食費も軽減できるのは魅力的ですが、デメリットと考えられる点もありますので、この制度の仕組みや注意するべき点をよく調べた上で検討してください。
3.こんな制度もあります!!
奨学金返還支援制度
若年層の地方定着の推進のため、若年層が抱える奨学金を地方公共団体が支援する取り組みです。
各地方公共団体が地域内での居住・就業など支援の要件を定めます。
令和元年度においては32府県、355市町村が実施しています。
成績優秀者はこんな制度を使ってみては??
大学独自の奨学金制度は基本的に大学入学後の4月以降に申請・給付または貸与をうけることになります。
それに反して、大学入試の時点で学費の免除・減免などを希望する学生の枠を設けて行う給費生・特待生・奨学金・スカラシップ入試といった入試を実施している大学があります。
各大学によってこの名称は異なり、また免除・減免の金額、期間や条件はそれぞれ異なりますので各大学に確認してください。
基本的に募集枠は少なく倍率が高くなりますが、候補の一つとして考えてみても良いかもしれません。
4.奨学金のメリット・デメリット
メリット
経済的に修学が困難な学生でも、奨学金制度を利用し、資金面のサポートを受けることで希望の進学先に進めることができます。
国の教育ローン、民間の教育ローンと比較すると、圧倒的に低金利です。
低金利ということは、卒業後に返済する金額の総額が教育ローンと比較すると安く抑えられるということです。
奨学金は在学中は返済の義務がなく、卒業後に返済を開始します。
また利息も在学中は発生しません。
一方で、教育ローンの返済は借り入れた翌月から返済が始まり、もろろん利息も同時期に発生します。
デメリット
貸与型の奨学金は卒業後に必ず利息を含めた返済があります。
月々の返済額は少額かもしれませんが、自ら生活しながらの返済が長期間にわたることを念頭においてください。
奨学金制度を利用する場合、連帯保証人や保証人が必要な場合があります。
連帯保証人や保証人には一定の条件があり連帯保証人や保証人になれない人もいます。
また、返済が滞った場合には、本人に代わり連帯保証人や保証人が返済の義務を負うことになります。
奨学金は、進学先の学校に入学した後に支払われるケースが多いため、入学費用などの入学前に必要になってくる費用は自身で準備しなければなりません。
一つの奨学金で借りられる金額は大きくないので、奨学金で賄えない金額は自身で準備しなければなりません。
それができない場合は、奨学金の併用や奨学金と教育ローンの併用を考えても良いかもしれません。
奨学金制度はメリットばかりではありません。
デメリットも把握したうえで、ご自身にあったものを選ぶ必要があります。
5.教育ローンとの違い
教育ローンは「国の教育ローン」と「民間の教育ローン」の二つに分けることができます。
民間の教育ローンは金融機関や信販会社で取り扱っています。
国の教育ローンが固定金利なのに対し、民間の教育ローンは変動金利が主流です。
ここでは、日本学生支援機構の奨学金と日本政策金融公庫が取り扱う「国の教育ローン」、民間の金融機関A銀行を比較しています。
詳細内容 | 日本学生支援機構の奨学金(第2種) | 国の教育ローン | A銀行(有担保型) |
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借り入れする人 | 学生 | 保護者 | 保護者 |
返済する人 | 学生 | 保護者 | 保護者 |
借入金額 | 月額2万円~15万円 (進学先により異なる) | 上限350万円 (例外あり) | 50万円以上3,000万円以内 |
返済期間 | 20年 | 15年 (例外あり) | 30年 |
適用金利 | 年3%を上限 | 1,68%固定金利 | 年2,975%変動金利 |
利息の発生時期 | 卒業後 | 借り入れの翌月から | 借り入れの翌月から |
日本政策金融公庫 国の教育ローン
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6.前編のまとめ
前編は、奨学金の種類やメリット・デメリット、教育ローンとの違いについて記載しました。
後編は、この奨学金は一体どのような人に向いているのか、学費のための奨学金だけれど、用途は限定されているのか、奨学金制度を利用したいけれどどのような手順で申し込めば良いのか、といったことをさらに詳しく述べていきたいと思います。
Text:Yuri Ishiguro
Director:Hirotaka Dezawa